七難隠す
「七難隠す」 色の白いは・・・髪が長いは・・・書は七難を隠す・・・あれ?なにか変?
子供の頃 私かなり色が白かったんです しかも喧嘩早かったので白色裸電球 そのこころは、色白ですぐに切れる・・・LEDの時代なのでわかりにくいかもしれませんね
そこで時々言われたのが「女の子ならば、色の白いは七難隠す だけどね。」と大人から何度かからかわれた覚えがあります。
今覚えばなかなか失礼な表現ですね。
「色の白いは七難隠す」は、
①色白の女性は七難を隠すので色白は得
という意味と
②色白で見えなくなってるけど七難のいずれかがあるのかも
という全く反対の意味があります。
とはいえ、色白イコール美人とは今の時代には合わない失礼な表現です。とはいえ色の黒は味良しともいいますので・・・
これとよく似た表現に
書は七難を隠す
これご存知でしたか?書道を始め文字がきれいな人は、誤字脱字や文章のまずさなどを隠してしまうという意味です。
パソコンでの文字が多くなった現代には、この表現は逆に貴重かもしれません
また
笑窪は七難隠す 髪の長きは七難隠す
とも言うようです。色白・笑窪・髪の長きのような容姿に関するもの、書のように能力に関するもの、まぁそれぞれに得意不得意が有るので、これらをなくすというよりは、いろいろあって使い分けるのが良いかもしれませんね。
さて、この七難とはなになのかなぁと思っていたのですが、若い頃にふと七難という言葉に出会ったことを思い出しました。
鳩摩羅什訳の仁王般若経・弘法大師の師匠の師匠である不空三蔵訳の仁王護国般若経に七難という言葉が出ていたことです。
『仁王般若経』鳩摩羅什訳
- 太陽や月が欠ける日食や月食など
- 星座が見えなくなること
- 大火など火の禍
- 大水洪水などの水の禍うを含む時節に合わない寒さ暑さ
- 大風による国土樹木の倒壊
- 暑さによる旱魃
- 賊たちによる国の内外が侵されること
- 日月失度 ②二十八宿失度 ③大火燒國萬姓燒盡
④大水沒百姓時節返逆。 ⑤大風吹殺萬姓國土山河樹木一時滅沒
⑥天地國土亢陽炎火 ⑦四方賊侵國内外賊起
①日月失度 ②星辰失度 ③大火(龍火・鬼火・人火・樹火)
④時節節改變寒暑不恒 ⑤暴風數起昏蔽日月
⑥天地亢陽陂池竭涸 ⑦方賊來侵國内外
のことです。それを思い出し少し調べてみました。
七難という言葉は出てきませんが 孫悟空の三蔵法師で有名な玄奘三蔵訳の『薬師本願功徳経』には
①人衆疾疫難 ②他國侵逼難 ③自界叛逆難 ④星宿變怪難
⑤薄蝕難 ⑥非時風雨難 ⑦過時不雨難
が説かれていますし
観音経にも七難という言葉は説かれていませんが七難が説かれています。チャイナの天台の大成者智顗の著作に七難という言葉が出ています。
あっ、少し話がずれますが、名古屋の栄、ぎふ、大垣の三ケ所の中日文化センターで一時間半の授業をしています。その中で大垣では今は観音様についての講義をしています。そんなかのほんの一部をつまみ食いしてみますと。
観音経、多くの場合は偈文・・・世尊偈と呼ばれている部分を読みますが、この本文は本当は法華経の第二十五巻、正式名称は妙法蓮華経観世音菩薩普門品第二十五といいます
最初に突如として無尽意菩薩という聞き慣れない菩薩が出てきます。
無尽とは尽きることなき果てしないという意味。つまりこの無尽意菩薩は、不滅の心を持つ者と訳せるのかもしれません。つまりわたしたち自身の不滅の心・菩提心を意味しているとも考えられます。
行六度四攝等種種行。誓度衆生。衆生界盡。菩薩之意乃盡衆生未盡。菩薩之意無盡。故名無盡意。と記されたお経もあります
さて、この無尽意菩薩が釈尊と対話をし、観音菩薩とはどんな存在なのかを訪ねます。その最初に現れるのが七難から逃れることです。
本文には火難・水難・風難・刀杖難・ 鬼難・枷鎖難・怨賊難の七難から逃れることが記されています。
どれを見てみても、いずれの経典を観ても、七難は人の欠点をあらわした言葉ではありません。あくまでも社会的な自然的な難を表した言葉です。七難隠すの七難とお経に説かれた七難は全く意味が異なっていました。
観音経は般若心経についで著名なお経でしたので、しかも天台宗は江戸時代に圧倒的な力を持っていましたので、七難というお坊さんから出た言葉が庶民に至り、言葉の外形だけ残って中身が変わってしまったのかもしれません。
七難隠すについて個人的な意見があります。人にはそれぞれの特徴があります。優れているかいないかは人の見方によって異なるもの。肌は白いが良いが髪は黒いが良いという方も少なくないと思いますし、健康的な褐色が良いとか髪は金髪にしたほうが良いとか、アニメでは髪は銀髪が結構受けるみたいです。まぁ人それぞれの特徴なんだとおもいます。そしてその特徴が際立てば際立つほど、7つの・・・まぁいくつかのと言い換えてもよいかと思いますが、欠点のように見えるものも気にならなくなる・・・そうした感じで使われるといいなぁと思います。無尽意菩薩は金剛界マンダラに出てくる賢劫の十二尊のお一人ですが、そのマンダラはひとりひとりの仏様の特徴をもって互いに敬いたすけあう相互礼拝相互供養を絵に表したもの。七難隠すもこうしたことまで感じるといいなぁと思える言葉です。
最近のコメント