従兄に世界的な分子生物学者がいる。76歳だが、特別栄誉教授として国立大学の医学部の研究室で今も研究をしている。彼の母が亡くなり、私も葬儀法事に参列した。そこで、色々と話す機会があった。
先天的な才能と、後発的な技能。それを脳のシナプスレベルで調べてみると面白いことが最近わかってきたらしい。
私は自然科学者ではないので、かなり端折って述べてみる。
ニューロンとニューロンを繋ぐシナプスは生まれた時に総量が決まっている。このシナプスの信号が、能力と関わっているらしい。よく使う能力は、シナプスでの信号が太くなる。これを長期増強といい、使わないものは長期抑圧といい、能力が発揮できない。つまりよく使うものは発展して、使わないものは退化するという。しかしシナプスそのものがなくなるわけではない。
ところが、世界的なバイオリニストの脳を調べた時に、明らかに後になって生まれているシナプスがあるという。この仕組みはまだ解明できていないが、従兄は仮説を立てているらしい。
ただし、今回のこの話は仮説のことではない。
私は真言僧。その視点からすると、シナプスの長期増強は精進によって生まれるのではないかと感じる。精進とは努力と工夫を繰り返していくこと。お焼香に象徴されるように続けていくことが眼目。同じことを何度も何度も繰り返す真言念誦、またはその大掛かりな修法は何度も何度も繰り返す。これを集中的に繰り返していると能力に変化が起きることがある。これがシナプスの長期増強と繋がっているのではないか。
この精進は時に辛いこともある。その辛さを超えていくことはある意味で辛抱、つまり忍耐とも言えるのではないか。六波羅蜜では忍辱として辱めに耐えることだが、精進の辛さを乗り越えていくこともまた忍波羅蜜と密接な関係なように思う。
さらに、その続けていくことを習慣化すること。この習慣化がシナプスの長期増強へとつながっているのではないか。良き習慣とはサンスクリットですシーラ。つまり戒のことである。仏教で戒を重要視するのは、覚りの道をある意味で自動化するこではないのか。つまり覚りの道という良き習慣を身につけること。
このように現代の最先端科学を見つめることも、真言密教の道を極めることの補強になると考えさせられた。もちろんオウムのようにヘッドギアをして脳波を測ったり電気信号を送るようなことは、私は望まないし、科学的な方法論とか宗教者の正しいあり方とは私は思っていない。
しかし、宗教者として今の自分の境地にい気づだからこそ、この葬儀法事というタイミングで御仏により従兄と会わせていただき話を聞くことができたのも事実である。機根とは何なのかも考えさせられた。後発に生じるもの、ここにある意味で大きな秘密があるのかもしれない。
今後も従兄とは色々教えていただくことを約束した。その約束の瞬間に、科学にも目を向けていた師匠の姿を思い浮かべた。そして土木などの当時の最先端技術を習得していた弘法大師の姿も。
このところの奈良博や東大寺ミュージアムの真言院展、そして従兄の交流、善きながれが起きている。感謝ばかり。
ただしこの話はまだ前半。
後半については、数日内にYouTubeビデオで語ろうと思っている。
コメント
大乗仏教は心と命と天体望遠鏡で見る宇宙の答えを与えていると思います。四諦八正道の心の科学、三千世界は現実宇宙と同じ階層宇宙。マクロとミクロを含む十方世界。色即是空の量子論的世界。久遠実成の命の真実。人と宇宙の大日如来。一即多・多即一のフラクタル宇宙。これらお釈迦様の悟りは梵天勧請でもたらされた天空由来の教えだと思います。八識は脳科学と結びつくと思います。
投稿: 巣篭りコアラ | 2024年5月10日 (金) 23時06分