海のように広く、敵であっても優しく受け止めよ 「千年先を見つめて(尾張七代藩種徳川宗春物語)」より
海のように広く、敵であっても優しく受け止めよ 「千年先を見つめて(尾張七代藩種徳川宗春物語)」より
前回に引き続き柳澤吉保と語りあう宗春を設定しました。
柳澤吉保: 「石田治部少輔が何故負け、何故権現様が勝たれたのか、ここを見れば一目瞭然ですわい。また権現様は一度失敗をしたからといって、たとえ戦で敵方であったとしても、臣従した者には深い慈悲を示してお出ででした。」
求馬通春: 「我が藩の石河家は、関ヶ原で西軍であったにも関わらず、今では当家の筆頭家老。しかも我が祖母霊仙院(千代姫)は、石田治部殿の縁者。」
柳澤吉保: 「権現様は、豊臣さえ残そうとされたお方です。」
求馬通春: 「なるほど、その喩えは大切ですね。今後、東照宮に赴きましたら、常に海のような広い心を思い浮かべまする。されど処罰を受けた者たちが残念でなりませぬ。冤罪の者が多いだけに、悔しい思いでございます。」
柳澤吉保: 「新井(白石)殿は、二年前に勘定奉行荻原近江守(重秀)殿を追い込み、自害させています。思い込むと何をしでかすや分からぬ。此度の江島殿のこともそうじゃ。策を弄し、人を追い込む。将軍家を護るために自らが悪鬼となる覚悟なのじゃろうが、将軍家を護るとは天下を護ることと考えて居ることが問題でございますな。天下を護ることが将軍家を護ることに繋がる、この視点を忘れておる。悲しいですのう。」
通春は大きくうなずく。吉保は続けて、優しくされど力強く
柳澤吉保: 「その思いを心に秘められませ。内に力を貯められませ。」
求馬通春: 「『大学』の泰平を望むものは修身ですね。」
柳澤吉保: 「さすがに学問が血肉になってきておられますな。世の中は不條理だらけでございます。その不條理を心に秘め、一つでも良くなるようお務め下さいませ。」
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