あえて将軍の逆を行う。民のためならばこそ 「千年先を見つめて(尾張七代藩主徳川宗春物語)」より
あえて将軍の逆を行う。民のためならばこそ
「千年先を見つめて(尾張七代藩主徳川宗春物語)」より
前回に引き続いて、野駆に来ている八大将軍吉宗と
部屋住ながら御連枝として将軍に可愛がられている通春(宗春)との対話です。
二人は仰向けに野原に寝っ転がっている想定です。
松平通春: 「名古屋のお城の金の鯱は、権現様が自らの大阪を創ろうとしたからだそうです。大阪は太閤の町故に新たな台所を必要とされた由。」
吉宗は驚く。
徳川吉宗 : 「そのようなお考えだったのか。平岩(親吉)殿を犬山におかれたのもその為じゃな。」
と尋ねると、通春様はうなずいた。しばらく沈黙する二人。
松平通春: 「私は全てにおいて上様の逆を行いまする。上様の出来ぬことをすればこそ、徳川一門かと。町中を歩み、庶民の声を聞き、衣装も派手ならば、お金も使いまする。ただしそれは自分の為に使うのではあらず。民のために使おうと存じます。民の喜びのためならばなんでも致しまする。」
徳川吉宗: 「ははは。どちらかが転んでも、どちらかが生き残ることもできようて。まぁ部屋住みのお主にはかなわぬ話じゃが、いつかお主を大名にしたいものじゃ。その時はそなたの思ったとおりにしてみると良い。今の言葉を決して忘れるでないぞ。ハハハハハ、神妙な話はここまでじゃ」
二人とも大声で笑う。
「ハハハハハ」
すると吉宗のお供周りが追いついてくる。
松平通春: 「そろそろ帰りましょうか」
徳川吉宗: 「うむ。今日の話は二人だけのヒミツじゃ。天は聞いておられたがな」
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