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2012年3月13日 (火)

白牛について 「千年先を見つめて(尾張七代藩主徳川宗春物語)」より

白牛について 「千年先を見つめて(尾張七代藩主徳川宗春物語)」より

宗春(通春)は、名古屋で白牛に乗るのですが、実はインドから白牛を輸入したのは吉宗で、安房で放牧したという記録があります。その乳を好んで飲んだそうです。その事実から、通春と吉宗のやり取りを設定してみました。

ある日、通春は江戸城に登城。すると黒書院前の廊下に、将軍吉宗が、老中松平乗邑と、御側御用取次の加納久通と共に庭を見ていた。吉宗は通春を見つけ、側に呼ぶ。

徳川吉宗:  「主計頭殿、天竺より珍しい動物が参りましたぞ。」

松平通春:  「白牛のことでございましょうか?」

徳川吉宗:  「既に耳に入っておるようじゃなぁ。」

松平通春:  「吉原でも大騒ぎでございまする。+」

横で乗邑が、その言葉を制するように咳払いをする。通春は、乗邑の顔色を伺い、さっと話題を元に戻す。

松平通春:  「上様は何故に白い牛を?」

徳川吉宗:  「そなたは、酪・酥・醍醐をご存知か?」

松平通春:  「仏教の経典に記してあるものでありますれば。」

徳川吉宗:  「まさにそれじゃ。酪も酥も醍醐も美味であるには違いないが、それ以上に身の健壮を保つよい薬と聞いておる。それゆえに、日の本や清の牛ではなく、経典の記された天竺の牛を求めたのじゃ。」

松平通春:  「なるほど。」

徳川吉宗:  「そなたは、白牛を見て何を思った?」

松平通春:  「昔より白牛は神話の動物でございまする。法華経の家宅の喩えの白牛もありますし、閻魔天の乗り物、菅公(菅原道真)の夢の話、毛利の萩の伝説や、磐城平の石の伝説、その他にも僧侶が白牛に乗っていたり、『露地白牛を蔵し、長空日月を呑む』という禅語もございますれば、とても意味ある生き物かと存じ上げます。」

松平乗邑:  「既に白牛を牧す地として安房を選んでおりまする。」

と口を挟む。通春は笑顔で

松平通春:  「着流しを着て、長煙管でもふかし、白い牛に乗りゆったりと歩みたいものです。」

松平乗邑:  「そのような武士にあるまじき姿を」

松平通春:  「将監殿。前田家初代の大納言様をご存知ですか?」

松平乗邑:  「いかさま。」

松平通春:  「あの方は若い頃は、女性物の襦袢を着て、練り歩いたそうでございます。大納言様の武勇にあやかりとう存じまする。」

松平乗邑:  「上様が食される乳を出す牛に乗るなど、とんでもないことではございませぬか。」

徳川吉宗:  「わしも白牛に乗ってみたかったのじゃが。」

松平通春:  「ほんとうは、間もなく来るという象に乗りたいと思っておりまする。されどそれは難しゅうござるので、白牛ならば可能かと思いましたが、やはり無理でございますか。」

徳川吉宗:  「主計頭殿、済まぬなぁ。そちと同じように象に乗り白牛に乗りたいと、わしも考えたのじゃが、年寄りどもがうるさくてなぁ。」

加納久通:  「こればかりは、と、上様をお止めいたしました。」

松平通春:  「白牛と象は、これより江戸で何かと話題になりましょうほどに。」

加納久通:  「それも吉原での話題でございましょうか?」

と通春に久通が笑って問いかけられると、

徳川吉宗:  「ワハハハハハ。これは遠江の勝ちじゃ、のう主計頭殿。」

それを乗邑が制するように咳払いをする。

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