理屈だけでは人は動かない 人情が人を動かす 「千年先を見つめて(尾張七代藩主徳川宗春物語)」より
理屈だけでは人は動かない 人情が人を動かす
「千年先を見つめて(尾張七代藩主徳川宗春物語)」より
前回に引き続き、間部詮房と通春(宗春)の会話
間部詮房: 「主計頭様。そなた若いのによくもそこまで気づかれるのう。」
松平通春: 「私ではござらん。新吉原にも芝居小屋にも、巷には人情が溢れておりまする。その人情が人を動かすのです。理屈だけでは人は動きませぬ。仏教で二つの戯論があることをご存知ですか?」
間部詮房: 「戯論?」
松平通春: 「昨年身罷られた法親王(公辯)様の受け売りでございますが、理屈に走る見論と、情に流される愛論とが二つの戯論でございまする。越前殿の御子孫のために、いやご領地の民のために今後は生きてくだされ。」
間部詮房: 「愛論と見論。白石殿と私は見論に走りすぎたということですな。芝居小屋や吉原、あ、いや、江戸の町民たちにも悪いことをしてしまいました。」
詮房様の言葉に、通春はまた優しく微笑んだ。
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