お目こぼしも必要 ただし、慈悲に基づくさじ加減が重要 「千年先を見て(尾張七代藩主徳川宗春物語)」より
お目こぼしも必要 ただし、慈悲に基づくさじ加減が重要
「千年先を見て(尾張七代藩主徳川宗春物語)」より
通春(宗春)が、公辯法親王と語り合った後、
大奥の江島と語り合い、
その日の午後に六義園の柳澤吉保に会いに行ったという設定です。
通春は、そのあと本駒込の六義園に足を伸ばし、
そこで柳澤吉保と側室の正親町町子に江島との話をする。
柳澤吉保:
「なるほど。確かに越前(間部詮房)も筑後守(新井白石)も、
生真面目さゆえに、人の心が分からぬ時がありますからなぁ。
特に大奥というところは閉ざされた場ゆえに、
お目こぼしがないと窮屈きわまりありませぬ。」
町子:
「私はあのようなところは嫌ですわよ。おほほほほ。」
吉保は町子の言葉に微笑むと
柳澤吉保:
「今のお城の中は一見すると、御台所天英院様、御生母月光院様の争いのようで、
表もどちらかについているように見えますが、
江島殿の言うとおり、実体としては、大奥と表の宿老たちとの争いですな。
また表は表で、名門の者とそうでない者との争い、少しややこしいですなぁ。
なんでもそうですが全てを暴こうとすると歪が出るもの、
どんな者も秘密の一つや二つはあるものです。
それを暴くのではなく分かっていながら目をつぶる時は目をつぶる。
ただしそれは保身のためでなく慈悲のためではなりませぬなぁ。
このさじ加減を間違えると大変なことになりまする。何事も慈悲でござるよ。」
求馬通春:
「あらゆる者、特に弱き者には慈しみ、大きな寛容の心、
つまりは忍の心で受け容れるということでございますか?」
町子:
「慈と忍は、求馬殿の旗印ですわね。そろそろお食事でもいたしましょうか?」
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