尾張藩七代藩主徳川宗春公の真実(3-01)『温知政要』一条世の中明るい事が大事 大きな愛と広い寛容の心で仁徳ある政を 原文と現代語意訳
第一条 世の中明るい事が大事 大きな愛と広い寛容の心で仁徳ある政を
<原文>
一夫人たる者
平生心に執守る事なくては
叶わさることなり
しかし其品多けれは
忘れ怠りやすし
一二字の中より
限なき工夫出る物なり
殊に国持たらんもの
すへずへまで行渡らすしては
あやる事多かるへし
故に慈と忍との二字を
懸物二幅にそらへ
慈の字の上には日の丸を描せたり
慈は心のうちにのみ隠れては
その詮更になし
外へあらはれすえすへへにも及ひ
隅々まても照したき心にて
大陽の徳をしたひての事なり
忍の字の上には月の丸を描せたり
堪忍は心の中にありて
外へ顕れさる時の工夫ゆへ
大陰の形を表せり
日月の二字を合すれは
則明の字也
大学の明徳にも叶へきか
萬の事明らかになくしては
所まかふ事のみにて
宜く正理に叶ふやうには行れまし
駕輿道具の者の衣服には
仁の字を相印に申し付たり
駕輿道具の者の衣服には
仁の字を相印に申し付たり
是内に居ては慈忍の二字を見
外へ出ては仁の字を見
朝夕何方におゐても
暫くも忘れすして執行
勘弁止むましき為の工夫也
<現代語意訳>
そもそも、人は
普段から心に留めて守らなければ
できないことがある。
しかし、その数が多すぎると
忘れやすく怠けやすい。
多くを語るより一文字や二文字で
数多くの工夫ができるものだ。
特に国持ち大名は、
その思いが隅々まで行き渡らなければ
間違った政治をしかねない。
だからこそ慈と忍の二文字で
二幅の掛け軸を作った。
慈の文字の上には太陽を描かせた。
慈は心の中に隠していては
あまり意味がないからだ。
その思いが外に顕れ、広く行き渡り、
隅々までも照らし出す心が慈。
太陽の徳のようであって欲しい
という願いだ。
忍の文字の上には月を描かせた。
堪忍は心のなかにあるもので。
外へ出すものではないので
太陰である月の形で表現した。
日月の文字を合わせれば
つまり明という文字になる。
『大学』に説かれる明徳にも
かなっているものと思う。
すべてのことが明らかでないのならば
間違ってしまうことばかりで、
あたりまえに正しい道理に
かなうようにはならない。
駕籠や輿等の道具を持つ者の衣服には
仁の文字を記すように申し付けた。
このように、
内にあっては慈忍の二文字を見て
外に出たときは仁の文字を見て
いついかなる時も、どこに居ても
ほんのわずかでも忘れないように
執り行い
物事を考え定めることをやめないための
工夫である。
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