年間行事の報告「立夏前 春風の四恩祭」
今回は高家寺の年間行事の報告です。「立夏前 春風の四恩祭」
シオンといってもユダヤ教のシオニズムの語源となったシオンの丘ではありませんよ。
さて、昨年末に名古屋の佐藤啓美さんという画家さん、実は中日文化センターの生徒さんなのですが、法隆寺の十一面観音さんを模写した絵を寄贈していただきました。
今年の節分会でお披露目したのですが、本堂に祀ったまま片付けることなくお祀りしていました。
するとコレを片付ける必要ではなかったことに気づきます、
令和四年は五月五日が立夏でした 夏の芽が生まれる日です。
高家寺ではその前日の五月四日、立夏前の節分に、あっ節分は年に四回あるんです。立春・立夏・立秋・立冬前の四回です。その立夏前の節分では、風の四恩祭をおこなっています
春風という言葉があります 節分ですので季節の最後ですから春風をイメージし、五大すなわち地水火風空の風大・風のお祭りです。
四恩とは、いろいろな説がありますが、我が師匠の松長有慶先生の説に従いますと、四とは具体的な数字の四ではなく、あらゆる恩という意味です。
あらゆる恩に感謝するお祭りなのですが単純な感謝ではありません。
まずは過去現在未来の三世に渡る恩に対して、まずは懺悔すること。
懺悔して、自らを謙虚にし、そして四恩に感謝するというもの。
ですから礼拝行、できる人は百八回を意識してもらいました。
その準備をしている過程で気づいたのです。日本のお寺の総本山たる東大寺、その二月堂で行われるお水取り、別名十一面悔過法、わかりやすい言葉にすれば十一面観音様に懺悔する法会ということ。
あっ、これだと思いました。
表白の中で十一面観音様に関しては、難しい言葉なので、それを現代意訳すると
十一面観音さまは、一つ一つを見つめてみると地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人界・天界・声聞界・縁覚界・菩薩界・仏界の十界のどこへでも赴くことを表す十面があり、
それらのすべての楽(ネガ)ヒニ応スルコトヲ総じて一であらわした一の頭を顕している
衆生を地獄・餓鬼・畜生・修羅の四つの悪趣の艱苦から、あらゆる神通力を持ってすくい上げる
信じ修行すればさまざまな怨敵が破壊することはなくなり
真言を唱えるものには様々な存在が護持してくださる
また心より信じれば長い間なおらない病気もすぐさまに除かれ
重ねて敬えば老いても目が衰えにくくなる
その願いは叶えられないとうことがない
とされています。
また十一面観音さまには
十種勝利 つまり
一に離諸疾病(病気にかからない)
ニに一切如來攝受(一切の如来に受け入れられる)
三に任運獲得金銀財寶諸穀麥等(金銀財宝や食物などに不自由しない)
四に一切怨敵不能沮壞(一切の怨敵から害を受けない)
五に國王王子在於王宮先言慰問(国王や王子が王宮で慰労してくれる)
六に不被毒藥蠱毒。寒熱等病皆不著身(毒薬や虫の毒に当たらず、悪寒や発熱等の病状がひどく出ない。)
七に一切刀杖所不能害(一切の凶器によって害を受けない)
八に水不能溺(溺死しない)
九に火不能燒(焼死しない)
十に不非命中夭(不慮の事故で死なない)
といわれています
また四種功德があり すなわち
一に臨命終時得見如來(臨終の際に如来とまみえる)
ニに不生於惡趣(悪趣、すなわち地獄・餓鬼・畜生・修羅に生まれ変わらない)
三に不非命終(早死にしない)
四に從此世界得生極樂國土(今生のあとに極楽浄土に生まれ変わる)
とされています。
この風の四恩祭で礼拝をすることは、懺悔により身口意に溜まった垢を清浄に清め、そして十一面様の十種勝利と四種功徳を得るものです。
ちなみにこの法要に参加すると、参加しましたという証書を署名入りでお渡しします。これを自らの棺に入れるといいですね。
なお、この懺悔も個としての自分だけではなく、個も含めた大きな自分と捉えて、家族や友人地域や国人類にまで広げていけるといいですね。
ちなみに導師である私は今のウクライナ・ロシア問題も含め、日本の周囲の問題にまで意識を働かせました。
そして称名念仏、南無・・・という言い方ですね、そしてその真言に関しては
胎蔵大日・金剛界大日・一字金輪・仏眼仏母・阿閦・宝生・観自在王・不空成就・釈迦・阿弥陀・薬師・金剛薩埵・普賢・文殊・聖観音・弥勒を各一回お唱えし、その後に十一面さまの真言を十一回、そして千手・如意輪・准胝・不空羂索・白衣の各観音、大勢至・般若波羅蜜・虚空蔵・地蔵の各菩薩、不動・四大明王・愛染・孔雀・馬頭の各明王、梵天帝釋天などの諸天の称名念仏と真言を各一回お唱えしました。
翌日、参加者は太ももの筋肉痛があったようですが、身口意は清浄な感覚を得られたようです。身体も言葉も心も浄化する法要としてとても良きものであったことは間違いありません。
今年はまだコロナ禍がありましたので大きく広報をしませんでした。その点はお詫び申し上げます。
十一面観音様が昨年末に高家寺に奉納されましたことも、大きな大きなご縁が有るのだと改めて感じています。
来年には改めて法要を広報させていただきます。
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